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    (平成30年度 桑木)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(平成30年度 桑木)

産学連携を目指したCAEによるマルチスケール熱流動解析

 研究代表者

 工学部・機械システム工学科 教授 桑木 賢也

 研究メンバー

 バイオ・応用化学科 教授  平野 博之
 生命医療工学科   教授  木原 朝彦
 生命医療工学科   准教授 小畑 秀明
 機械システム工学科 講師  近藤 千尋

 研究目的 

①背景と経緯
 近年の計算機の高性能化に伴って、産学における研究および技術開発にはコンピューターシミュレーションは必要不可欠な解析ツールとなってきている。こうした状況に鑑み、日本機械学会ではCAE (Computer Aided Engineering)に関わる技術者資格認定試験を設け、産学におけるCAE研究者およびCAE技術者の育成を支援している。その結果、個人あるいは企業単位ではCAEの有用性が強く認識されるようになってきたものの、実際にこれを利用できているのは、学の研究者および産にあっては大企業の研究技術開発者にとどまっているのが現状である。中小企業等で技術開発にCAEの利用が進んでいない理由として以下の点が挙げられる。
問題点 (1) 自社に専門家がいない(シミュレーションが行えない)
問題点 (2) シミュレーションソフトウエアが高価
問題点(2)に関しては、これまでFluent (ANSYS, Inc.)などに代表されるようにアフタケアを含め、数十万から百万を超える費用が必要であった。このため中小企業ではCAEの導入が難しかった。そのような中、近年、OpenFOAM(Open source Field Operation And Manipulation)に代表されるようなオープンソースコードが、研究者による信頼性の検証を受けて、産学の場で利用されるようになり、費用に関わる課題を解決したかに思われた。しかし、中小企業への普及にまでは至っていない。これは問題点(1)に関係して、正確なシミュレーションを行うには現象理解に基づく専門的な知識が必要で、中小企業においてはそうした人材を擁するだけの余裕がないことによる。
 このような状況の中、岡山県では産学連携を通した中小企業におけるCAE解析技術の高度化を目的として、2006年に岡山県工業技術センターが県内の大学の研究者に呼びかけ、解析支援ネットOKAYAMA(2012年より解析シミュレーションネットOKAYAMAに名称変更)が立ち上がり、本研究代表者も設立当初から会員として活動している。このように産学連携を通した社会的要請の強いCAEを岡山で普及させる環境は整っているものの、ニーズのある中小企業すべてに有効に機能しているとはいえない。これは中小企業のニーズがミクロからマクロに至るまでのマルチスケールに及ぶこと、オープンソースを前提とした講習となっていないこと、教育する側の立場や専門が多様であることなどが要因である。そこで本プロジェクトでは、こうした課題をすべて解決するために、マルチスケールに対応した課題に、オープンソースコードを用いて、本学研究者グループがまとまって取り組むことで、上述のコミュニティとも連携しながら地元岡山の産業界へCAEを広めること、本学教員の専門分野研究を遂行することで共同研究につなげることを目的としている。
 次に本プロジェクトメンバーで臨む学術的背景に関して述べる。岡山県の代表的な産業は、自動車産業に見られる機械工学、化学コンビナートに見られる化学工学、医療機器に関係する生体医工学などが挙げられる。これは岡山県が主導で行っている「ミクロものづくり岡山」においても以下の5つを重点育成分野としていることからも自明である。
・航空機分野 ・高度医療機器分野 ・自動車分野 ・ロボット分野 ・新エネルギー分野
これらすべての分野で熱流動解析が関係しているため、先の「解析シミュレーションネットOKAYAMA」も「ミクロものづくり岡山」の分野別研究グループの一つとして活動が行われている。
このように熱流動解析は幅広い分野にわたるため、図1に示すように取り扱うスケールは化学産業のマイクロ反応装置に見られるサブミリオーダー(ミクロ)から、生体のサブミリから数センチ、自動車産業の数センチから数十センチ、ゴミ焼却炉などの環境施設のメートルオーダー(マクロ)と非常に幅が広い。
以上、本プロジェクトは、県の重点分野施策に鑑みたマルチスケール問題を対象とし、産学連携で整備済みのネットワークを利用したCAE教育を通し企業との共同研究へと繋げるという、社会的要請に基づいた研究拠点形成を目指したものである。

②研究期間内の目標
 本プロジェクトでは、研究推進によるCAE技術の確立と、研究拠点形成を見据えた成果還元の2つに分けて目標を設定する。
【1】マルチスケールCAE解析技術の確立
プロジェクトメンバーそれぞれが、実験的手法も用いながら、CAE解析結果を検証するとともに、これらの成果を融合させることで、さらに一般的な問題に対応できるシミュレーション技術の確立を行う。
【2】CAE解析技術を通した産学ネットワークとの連携
産学連携の枠組みですでに整備されている解析シミュレーションネットOKAYAMAを通して、マルチスケール解析技術に関わる成果を地元岡山の産業界へ還元する。これに関連して、上述の問題点(1),(2)についてはそれぞれ、人材育成、近年広く利用されているオープンソースコードであるOpenFOAMなどの利用を通じて解決を図る。
さらに、こうした産学連携を通じ、産との連携による共同研究、ひいては研究拠点形成につなげることも視野にいれてプロジェクトを遂行していく。

③特色及び独創性
 本研究は、OpenFOAMをベースとして、岡山県が重点分野として定める機械および化学と関わる熱流動の各分野の専門家が、サブテーマに分かれてそれぞれ実験結果に基づいた解析を遂行し、さらにそれらの成果を持ち寄り、熱流動を包括的に扱うことが可能なマルチスケールソリューションシステムを構築し、地元岡山の企業への還元までを目指している点に、プロジェクト全体としての独創性を有している。それぞれのテーマ毎の学術的な独創性については、例えば平野であればすでに取得している特許技術をさらに発展させた内容であるなど、特色ある研究となっている。したがって本プロジェクトは、それぞれのテーマの現象解析を行うのみでなく、その成果を統合してさらに汎用性を有するシステムを構築して県内企業等に無償で提供する点において、県内科学振興への波及効果がある。
 また、一般的には数値解析を扱う研究者の多くは、実験による検証を別の研究者に委ねることが多い。しかしながら、本研究グループは様々な可視化実験装置(例えば流れの可視化装置であるPIV (Particle Image Velocimetry) システム、温度、濃度の可視化装置であるマッハツェンダー干渉計)を有しており、CAE解析技術の信頼性に関わる検証実験も、自らあわせて行える点に技術的優位性がある。

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