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    (2020年度 豊田)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2020年度 豊田)

モンゴル国ゴビ砂漠の地質・化石調査から解明するアジア内陸域における生物多様性とその変遷

 研究代表者

 古生物学・年代学研究センター 教授 豊田 新

 研究メンバー

 生物地球学部 生物地球学科 教授 能美 洋介
 生物地球学部 生物地球学科 教授 石垣 忍
 フロンティア理工学研究所 教授 兵藤 博信
 工学部 機械システム工学科 教授 衣笠 哲也
 生物地球学部 生物地球学科 准教授 高橋 亮雄
 生物地球学部 生物地球学科 准教授 實吉 玄貴
 基盤教育センター 准教授 青木 一勝
 フロンティア理工学研究所 准教授 今山 武志
 生物地球学部 生物地球学科 講師 林 昭次
 生物地球学部 生物地球学科 助教  千葉 謙太郎
 モンゴル科学アカデミー古生物学研究所 所長 Khishgjav Tsogtbaatar
 モンゴル科学アカデミー古生物学研究所 研究員 Buuvei Mainbayar

 研究目的 

①背景と経緯
 白亜紀末の大量絶滅により、多くの脊椎動物が絶滅したが、絶滅を免れたグループもあり、絶滅した種とそうでない種を分けた要因については明らかではない。また先行研究によれば、白亜紀末の絶滅以前、既に恐竜類の多様性は低下していたとの報告もある。このような白亜紀を通した化石記録は、当時沿岸部で堆積した地層、あるいは欧米を中心に研究されてきた。一方で、モンゴル国ゴビ砂漠は、陸域の生態系を考える上で重要な大陸内陸部での地層と化石記録を保存している。本地域の白亜紀生物相研究は、アジアかつ内陸部より産出する白亜紀陸上生物相を知る上で極めて重要な情報を提供する。しかし、化石種の生息年代は詳細に決定されておらず、北米などの化石記録と対比する大きな障壁となってきた。本研究グループでは、プロジェクト研究推進事業、私立大学研究ブランディング事業などにより、ゴビ砂漠での継続的な野外調査を進めてきた。この過程で、本学に導入されたレーザーICP質量分析計を用いて化石含有層の新たな年代測定法を開発し、実際に絶対年代を求めるとの成果も得ているほか、化石の生化学的分析や恐竜のロボット工学的歩行復元といった、これまでにない視点の化石研究も進めてきた。ところが2019度に、予定より1年早く私立大学研究ブランディング事業が打ち切られることになり、研究成果を上げてきているこれら事業の研究計画は完遂していない。

②研究期間内の目標
 以上の経緯を踏まえ、本申請研究では、ブランディング事業において目標とし、かつ成果を挙げつつあった課題に取り組むとともに、これまでの成果を踏まえて、新たな研究目標を次のように設定する。

(1)化石及び化石含有層の年代決定
 モンゴル国ゴビ砂漠の白亜紀化石記録に対して、特にその変遷について議論が深まらない要因として、化石記録を除く白亜系の年代が明らかになっていないことがある。本申請研究では、骨化石を対象としたアパタイトの直接年代測定の問題点抽出と、さらなる可能性の模索を行うとともに、今回有用性が確認された土壌性炭酸塩岩の年代測定手法をより広範な年代といわれる地層へ適用する。すでに測定用試料(年代測定用骨化石標本と土壌性炭酸塩岩)はゴビ砂漠より採取されており、本学への輸送を完了している。これらの試料に対し、レーザーICP質量分析計によって分析し年代を得ることで、ゴビ砂漠後期白亜紀全体の年代軸確立を目指す。

(2)化石種の生理・生態の復元と現生生物との比較
 化石として発見される絶滅動物の生理・生態を復元するためには、現生種の骨の構造、足跡と生理、生態との関係を解明し、そのデータを基に化石へ応用する必要がある。研究ブランディング事業において、足跡化石のデジタルデータ化と取得効率の迅速化を達成し、現生動物や、力学シミュレーション結果との比較が可能になった。本申請研究においては、さらにデータを蓄積し、数理モデルの再構成、ロボット工学における知見などにより、現生動物と対比させて、竜脚恐竜を中心とした大型四足生物の特殊な歩行様式、特に旋回動作に焦点をあてた歩行様式の解明をすすめる。また、古生物の生理生態学的情報を理解するため、恐竜学博物館に導入されたX線CTスキャナーを中心に、恐竜類と系統的に近いワニ類や鳥類の骨内部構造のデータを収集している。これら現生動物と恐竜類の骨外部・内部構造の比較、同位体の分析による恐竜類の成長・性差・脳容積のデータを蓄積し、化石種の生理・生態の復元を進める。さらに、恐竜化石の病理標本に対しX線CTスキャナーを用いて観察し、骨組織の復元過程を明らかにするといった挑戦的な研究課題に取り組む。

(3)Bayn Shire層の年代層序確立と化石動物相の解明
 Bayn Shire層は、ゴビ砂漠の他のより新しい地層に比べ、産出する化石標本は量・質ともに劣っていると思われてきたが、本研究グループは、保存状態の良好な恐竜化石や、新種の可能性の高い哺乳類化石を含む小型動物化石の密集層を発見した。一方、研究ブランディング事業の成果として土壌性炭酸塩岩から得られたBayn Shire層の年代(約9000万年前後)は、被子植物の多様化に伴い、様々な動物で現代型の分類群が適応放散した時期に相当する。前述のように、この時代の陸上化石記録は世界的にも乏しいため、本層で得られる化石動物相は、この時期の動物の進化史における最大の空白期を埋める鍵となる可能性が高い。本申請研究では、土壌性炭酸塩岩の年代測定をさらに積み重ね、本層から新たに発見される動物化石の分類学的検討を組み合わせることで、生態系の一大変革期の詳細を明らかにする。

③特色および独創性
 恐竜などの古生物の研究では、形態学的あるいは地質学的側面のどちらかに研究対象を絞って行われることが多く、「生物としての恐竜」という総合的な成果が得られていない。本申請研究においては、地質学・地球化学・古生物学・生物学・工学というさまざまな側面の学問領域から研究を進め、総合的に後期白亜紀の脊椎動物相を解明する点が特色であり、独創性である。前述の通り、土壌性炭酸塩岩に基づく年代測定法は、約100年の間切望されてきた年代決定を可能にするだけでなく、これまで年代測定が不能であった世界各地の地層への応用も可能にする。また,発見した化石密集層は、その一部を発掘したに過ぎず、今後さらなる新種化石の発見が見込まれる。このような年代学と古生物学の先進的な取り組みを同時に実現できるのは本研究グループをおいて他にない。

④協働効果
 本申請研究のプロジェクトメンバーは、学内の複数機関に所属する教員、研究協力協定先の研究機関の研究者から構成され、地質学・鉱物学・年代学・古生物学・工学・生化学などを合わせた学際的なアプローチを可能にするとともに、現地をよく知るモンゴル側の協力を得て行われるものである。古生物に関するこれらのアプローチで得られた成果を総合することによって、これまでにはない、新しい次元の成果が得られることが期待できる、さらに研究成果については古生物学・年代学研究センターの恐竜学博物館を中心に社会に向けて発信することを予定している。

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