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    (2022年度 早川)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2022年度 早川)

新学術領域「グライコエピジェネティクス」の創生に向けた基盤研究

 研究代表者

 獣医学部 獣医学科 毒性学講座 講師 早川 晃司

 研究メンバー

 獣医学部 獣医学科 創薬学講座 教授 俵 修一
 獣医学部 獣医学科 医獣医連携獣医学分野 助教 三河 翔馬
 獣医学部 獣医学科 創薬学講座 助教 藤原 信行

 研究目的 

①本研究の背景
 本プロジェクトでは、食と健康の分野に貢献することを目指すと共に、新学術領域「グライコエピジェネティクス」の創生に向けた基盤研究を遂行する。これに至った背景を以下に述べる。

背景I 食の豊かさがもたらした弊害

 先人達の功績により、現在我々は飽食の時代の只中にいる 。しかし、その弊害として糖尿病に代表される慢性疾患の増加がもたらされ、メタボリックシンドロームという言葉が生まれた。慢性疾患は食生活など習慣が発症の要因となり得ることはこれまでの研究で明白ではあるものの、今後も多くの方が慢性疾患に罹り、生命の危機を回避し続け、生きていかざるをえない。そのため、新たな視点から予防・治療法の技術基盤を確立し続け、慢性疾患であったとしも健康寿命を長期化させるための戦略が必要となる。

背景II 栄養とエピジェネティクス

 生命の進化とは如何に栄養を取り込むかであり、例え下等生物では毒であっても高等生物はそれを有用化する仕組みを獲得した。これは進化の過程で、ゲノム上にある遺伝子およびその制御の多様化によって達成された側面がある (Hayakawa et al., Mamm Genome, 2012)。栄養が過剰・不足した時、細胞のゲノムスイッチが切り替わり、哺乳動物においては各細胞種の機能発揮は栄養条件に依存している。ゲノムスイッチとして働く「エピジェネティクス制御系」は遺伝子機能の記憶装置であるため、エピジェネティクス変化は長期的な細胞機能の異常や欠損となって現れ、個体の慢性疾患に繋がり、合併症の発症の原因になり得ることは容易に想像できる。

背景III ヒストンのグリコシル化の発見

 エピジェネティクス制御の中心はヒストンタンパク質に施される化学修飾 (ヒストン修飾) であり、これまでにメチル化など多数の修飾が見つかっている。では、どの修飾が栄養シグナルと遺伝子利用を繋ぐ鍵となるだろうか。申請者はこれまでにヒストンH2Aの40番目のセリンにグリコシル化が起こること (ヒストンのグリコシル化) を発見した (Hayakawa et al., Sci Rep, 2016; Hayakawa et al., Epigene Chrom, 2017)。この修飾の基質となるUDP-GlcNAcの産生には、グルコース、アミノ酸や核酸など様々な代謝経路が関与する。また、これまでの申請者の研究において、グルコースや特定の栄養素 (代謝中間体)によって修飾量が増減することを明らかにしている (Hayakawa et al., Sci Rep., 2019)。 つまり、グリコシル化は栄養センサーとして働くヒストン修飾系であり、栄養環境に依存した遺伝子調節機構としての働きが期待できるのである 。


②本研究の目的と研究期間内の目標
 以上の背景より、「慢性疾患および合併症の原因メカニズムとしてのヒストンのグリコシル化の重要性」が浮上してくるものの、これを証明するためには、(1) 基礎・応用研究のために、ヒストンのグリコシル化を人工的に調節する技術がない、(2) 糖尿病や高血圧の個体で実際にヒストンのグリコシル化に変化があるかが不明である、といった問題を解決する必要がある。これらの問題を踏まえ、本研究期間では、以下の3項目を期間内で遂行する。

 以上を達成することができれば、慢性疾患の発症および維持におけるヒストングリコシル化の重要性を示すことができるだけでなく、将来的に本学発となる新学術領域「グライコエピジェネティクス」の創生へとつながり、様々な課題の大型競争的資金の獲得にも有利に働くことが期待できる。

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