工学部・電気電子システム学科 講師 麻原 寛之
基礎理学科 教授 森 嘉久
電気電子システム学科 教授 河村 実生
電気電子システム学科 教授 笠 展幸
応用物理学科 准教授 石田 弘樹
電気電子システム学科 講師 荒井 伸太郎
① 研究背景と経緯
世界的な人口増加に伴う天然資源の枯渇や、多発する自然災害による電力網の麻痺に鑑みると、従来の大規模発電所による集中型発電の電力供給量を減らし、分散型発電の普及に努めることが重要です。
本プロジェクトにおいては、学内の材料・電気・通信分野にかかわる研究者と、学部・学科の枠を超えて連携し、新エネルギーの生成・システム構築・アプリケーションに至るまでの各要素技術を分野横断的に開発し、岡山理科大学発の新分散型発電方式を社会に広く発信することを主目的としています。
1-1. 排熱発電
異なる金属または半導体材料を接合し、その接合部分に温度差を設けると電圧が発生します。このような、温度差から電力を得ることができる物理現象はゼーベック効果と呼ばれ、その応用例である熱電池は次世代のクリーンエネルギーデバイスとして注目を集めています。熱電池の出力特性を調査し、電力を有効に取り出すための周辺回路を開発しておくことは、学術および産業応用の観点から重要な研究テーマであるといえます。以上に鑑み、熱電池の材料特性を調査し、発電エネルギーをバッテリへ給電するための電源回路設計および蓄えたエネルギーを利用したアプリケーションの開発に至るまでの行程をパッケージングし、岡山理科大学発の排熱発電システムの実現を目指します。
1-2. 超伝導発電
風力・水力発電は、他のクリーンエネルギーを利用した発電方式と比べて、より大きな電力を発電可能な方式です。本プロジェクトでは、このクラスの発電へ応用可能な超伝導発電機の開発を目指します。
1-3. IoT電力管理
発電システムを運用するうえで、電力管理システムを構築しておくことは必要不可欠です。そこで、マイクロコンピュータを用いて熱電池から最大電力を取り出すための制御システムの構築を目指します。プロジェクト内では、熱電池から最大電力を取り出し可能な制御手法を実装します。
水力・風力発電においては、広域に設置される発電システムの電力管理をどのように行うのかが鍵となります。この種の電力管理システムについては、可視光通信を用いた電力管理システムの実現を見据えた基礎要素技術の開発に取り組みます。可視光通信とは、人間の目に見える可視光を使った無線通信技術です。プロジェクト内では、遠くの情報発信源(光源)と正確に情報をやりとりできる通信技術の開発を行います。
1-4. 非接触給電
得られた電力を有効かつ快適に利用するうえで、電力供給システムを整備・構築しておく必要があります。本取り組み項目では、従来法と比較して1/200以下の極端に低い交流周波数帯でのワイヤレス給電法の開発をすすめます。
② 研究期間内の目標
1-1. 排熱発電
熱電池によって発電された電力をDC-DCコンバータを用いて電力コンディショニングし、バッテリへ給電する機能を備えた排熱発電システムを実装し、電力利用率及び電力変換効率の観点から性能評価します。
1-2. 超伝導発電
超伝導モータの性能向上と超伝導発電システムの基礎要素技術開発を行います。
1-3. IoT電力管理
「1-1. 排熱発電」および「1-2. 超伝導発電」へ応用することを念頭に、下記に取り組みます。
最大電力点追従制御手法の開発
可視光通信システムの開発
1-4. 非接触給電
「1-1. 排熱発電」および「1-2. 超伝導発電」より得られた電力を負荷へ給電することを念頭に、下記に取り組みます。
超低周波ワイヤレス給電装置(非接触給電装置)の性能向上
1-5. プロジェクト全体
定期的に研究進捗状況の打ち合わせを行うなど、各取り組み項目が連携して最大限の研究成果を生み出せるよう努めます。プロジェクト期間内の研究成果目標を以下のように設定します。
5本以上の学術論文の投稿
学外競争的研究費の獲得
③ 特色及び独創性
学内の材料・電気・通信分野において特色ある研究を推進する研究者と協働し、個々の研究テーマを分野横断的にパッケージングすることに主眼をおいています。クリーンエネルギーを用いた発電、電気回路を用いた発電電力の有効利用、IoT技術を駆使した電力管理・通信技術の確立、非接触給電を用いた各種電気機器への電力供給に至るまでの基礎要素技術を統括的に開発する体制を整えることで、各担当研究者間で共著による学術論文執筆、科研費やナショナルプロジェクトなどの連携型競争的研究費の獲得、OUSフォーラムやオープンキャンパスにおける魅力的研究内容の発信など、相乗効果が期待できると考えています。