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    (2020年度 奥田)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2020年度 奥田)

反応プログラミングによる位置異性体自在構築法の開拓:含フッ素医薬品・光電変換材料創製への展開

 研究代表者

 工学部 バイオ・応用化学科 教授 奥田 靖浩

 研究メンバー

 工学部 バイオ・応用化学科 准教授 田所 竜介
 岡山大学 異分野基礎科学研究所 教授 西原 康師
 岡山大学 異分野基礎科学研究所 教授 森 裕樹

 研究目的

①背景と経緯
 ごく近年、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、抗ウイルス薬をはじめとする新薬の開発研究が特に重要な研究課題として注目されている。この新薬開発について本学の合成化学領域から積極的にアプローチすることを目指す。本プロジェクトでは申請代表者が独自に開発した遷移金属触媒のスイッチングを用いた反応プログラミングを活用し、π共役系化合物の位置選択的合成法を確立する。さらに本手法を用いて、π拡張型含フッ素化合物の精密合成を行い、オリジナルリード化合物の探索、新規医薬品への応用を試みる。なお、本申請は 2019 年度 工学部萌芽的研究をさらに発展・展開するものであり、これまでに確立したトリアゾール合成法を用い、フッ素を様々な場所に置換することで新たな生理活性発現の可能性を探る。合成したフッ素置換トリアゾールの活性評価は発生生物学を専門とする本学の田所グループに評価を依頼する。また最近では、申請代表者らの研究グループでは位置選択的パイ拡張反応-フッ素導入の連続変換プロセスを開発した。この反応を活用することで含フッ素芳香族アミンの精密合成法を確立し、高性能正孔輸送材料の開発へと展開する。本学と協定する岡山大学の西原・森グループと共同研究を実施し、正孔輸送特性の評価、分子設計に関する研究議論を通じてオリジナル高性能材料の確立につなげたい。

②研究期間内の目標
 本プロジェクトでは、以下の2化合物を標的化合物として設定し、その合成と機能評価に関する研究を実施する。

(1)含フッ素トリアゾール誘導体:含フッ素低分子医薬品としての応用
 2019 年度 工学部萌芽的研究において、申請者らの研究グループではアミノ基をもつトリアゾール誘導体に焦点を当て、その生理活性を探索してきた。その結果、神経伝達遮断機能をもつアミノトリアゾールの合成法を確立したことに加え、抗腫瘍薬 NCC-149 の簡便合成にも成功した。この知見を活かし、本研究ではこれらのトリアゾール誘導体にフッ素官能基を導入し、合成した分子の構造と脂溶性や代謝安定性の相関を種々詳細にチューニングしながら新たなリード化合物を創出する。

(2)含フッ素芳香族アミン誘導体:p型有機トランジスタ材料・太陽電池材料としての応用
 従来から芳香族アミンは優れた正孔輸送特性を示し、有機トラジスタ材料や太陽電池材料として利用される。ごく最近、申請代表者らの研究グループではイナミンのπ拡張反応において生成物の位置選択性を制御し、異なる位置異性体を作り分けることに成功した。本申請では、この反応を位置選択的なフッ素化反応として応用することで正孔輸送材料として優れた特性をもつ芳香族アミンの創成を目指す。具体的には、フッ素を導入することで HOMO–LUMO レベルをチューニングしたり、大気安定性、動作安定性を付与することでより高い実用物性を持つ有機材料を実現する。本研究では学外の専門家である岡山大学の西原・森グループに性能評価を依頼し、得られた光電変換効率を分子設計と合成にフィードバックすることで本研究チーム独自の高性能光電変換材料を創出する。

③特色および独創性
 フッ素は医薬品産業において最も注目される元素であり、近年の医薬品売上高ランキングの上位 10 種に含まれる低分子医薬品はすべて含フッ素医薬品であることが知られる。また光電変換材料でもフッ素の電子求引性を利用して新奇 n 型有機半導体が開発されるなど、化学産業において有機フッ素化合物は依然として多岐にわたる需要が見込まれる。有機分子へのフッ素の導入は現在でも最も困難な研究課題の一つであるが、本研究課題では“既知法の組み合わせ”が通用しない新奇機能性フッ素化合物を標的化合物に設定し、その合成と性能評価に挑む。チャレンジングな研究主題ではあるが、申請者がこれまでに確立した位置選択型π拡張反応を活用すれば、本研究に必要なトリアゾールや芳香族アミンを合成可能であることことから性能評価も容易に実現可能であろう。また本研究は工学部萌芽的研究からの発展研究であるが、これを学外共同研究に展開することにより、本学独自の研究基盤をより高い水準まで高めたい。

④協働効果
 本プロジェクトでは有機合成化学および発生生物学において高い専門性を有する各教員と共同研究グループを構築し、多角的なアプローチで機能性有機フッ素化合物の開発に注力する。具体的には、標的となる有機フッ素化合物の合成・反応開発を奥田グループが担当、田所グループがトリアゾール誘導体の生理活性評価をそれぞれ分担して生理活性物質の探索研究を推進する。また奥田グループが合成した含フッ素芳香族アミンについては、岡山大学の西原・森グループとの共同研究を実施して光電変換効率測定を委託することが必要不可欠であり、これによって材料特性の数値化が初めて可能となる。加えて、当該岡山大学の研究グループは有機合成化学においても高い専門技術を保有するため、新たな分子設計・材料改善に関しても相乗的な研究効率化が期待できる。以上のように、合成、生理活性評価、材料特性評価と異なる3つの研究グループが共同研究チームを構築することにより、新規医薬品および新材料の創出が実現できる。

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