獣医学部 獣医学科 教授 江藤 真澄
情報理工学部 情報理工学科 教授 赤木 徹也
情報理工学部 情報理工学科 准教授 趙 菲菲
情報理工学部 情報理工学科 准教授 久野 弘明
情報理工学部 情報理工学科 助教 横田 雅司
工学部 情報工学科 教授 片山 謙吾
工学部 情報工学科 助教 川端 宣之
工学部 電気電子システム学科 准教授 荒井 伸太郎
工学部 機械システム工学科 准教授 寺野 元規
獣医学部 獣医保健看護学科 教授 古本 佳代
獣医学部 獣医保健看護学科 准教授 佐伯 香織
獣医学部 獣医保健看護学科 講師 宮部 真裕
獣医学部 獣医学科 准教授 久枝 啓一
獣医学部 獣医学科 准教授 井上 陽一
獣医学部 獣医学科 准教授 佐伯 亘平
獣医学部 獣医学科 助教 大西 章弘
獣医学部 獣医学科 助教 朱 夏希
獣医学部 獣医学科 助手 吉竹 涼平
本研究は、我々が創始した「いきものQOLプロジェクト」の枠組みに新たな専門性を加えることで、他に類を見ないデータ駆動型スマートデバイス開発を進め、それらの社会実装を加速することを目的とする。そのために、各デバイスの技術成熟度レベル(TRL)を考慮しながら、実験室とフィールドでの実証実験を重ねて、開発するデバイスの実用性を高める。具体的には、1)動物の健康状態をリアルタイムでモニタリングするバイタルセンサーを開発し、平時のみならず麻酔管理や災害時の同行避難環境でも生理情報を的確に測定し、安全な管理を可能にする、2)獣医療従事者向けの教育支援デバイスを開発・実証し、技術習得を効率化することで、獣医療・動物看護教育の質向上と人材育成を促進する、3)畜産現場やペット医療の効率化を目的としたヘルスケアデバイスを創出し、持続可能な動物医療システムの構築に貢献する。本研究の成果により、データ駆動型アニマルヘルスケアを支える獣医療工学の社会実装モデルが確立されると考えられる。将来的には、地域産業界や自治体との連携の深化や動物と管理者のQOL向上、獣医療の革新、さらには、これらに伴う大学ブランドの強化が期待される。
①本研究の背景と着想に至った経緯
動物福祉の向上と獣医療の進化は、もはや選択肢ではなく、社会的な責務となっている。欧州を起点とする世界的なアニマルウェルフェアの潮流に伴い、獣医療の高度化・デジタル化が急務となる中、従来の手法では限界が指摘されている。愛玩動物の健康管理から産業動物の生産性維持、獣医療従事者の教育や訓練まで、あらゆる分野でイノベーションが求められている。
しかし、現実には、獣医療技術は長らくヒト医療技術を応用する形で発展してきたため、動物特有の行動や生理的特性を十分に考慮した技術開発が進んでこなかった。加えて、日本の畜産業では農家の高齢化が深刻化し、持続可能な畜産のためのスマート技術の導入が不可欠となっているにもかかわらず、実装の遅れが課題となっている。獣医師がこれら日本特有の課題解決に積極的に関与する機会が少なく、十分な支援体制も確立されていない。
本研究は、この現状を打破するため、情報理工学・工学・獣医学の異分野連携「獣医療工学」の基盤を構築し、先端技術の開発・社会実装を推進する。獣医学の知見とデータサイエンス、センシング技術、スマートデバイス設計を融合することで、これまでにないアニマルヘルスケア技術を創出する。特に、岡山・愛媛今治地域の産業界との将来的な連携をめざし、社会実装を前提とした新たな獣医療工学研究開発モデルを確立し、環瀬戸内地域から獣医療と福祉の未来を変革することを目指す。
②本研究の目的と研究期間内の目標
本研究の目的は、獣医療工学を基盤としたスマートアニマルヘルスケアの実証を通じて、動物医療・福祉・教育の革新を図ることである。特に、獣医学、情報理工学、工学の融合による革新的な技術開発とその実装を進め、災害時同行避難や畜産業支援といった社会的ニーズに応えることを目指す。具体的には、本研究期間内に以下の目標を設定する。
1.動物の健康状態をモニタリングするデバイスを開発し、麻酔下・活動時・災害時同行避難環境など、 多様な状況でのデータ収集・解析・活用を行う。
2.動物ケア従事者の技術向上を支援する高効率な教育・訓練支援デバイスを開発することで、その教育効果を実証する。
3.動物および管理者を支援する新たなヘルスケアデバイスを開発し実証する。
本研究の成果により、データ駆動型アニマルヘルスケアの概念が確立されることで、岡山理科大学にて萌芽した技術を社会に実装するためのモデルを構築できると考えている。具体的には、① 動物の健康状態をリアルタイムでモニタリングするバイタルセンサーの社会実装、② 獣医療従事者向け教育支援デバイスの商用化戦略、③ 動物ヘルスケアデバイスのリアルフィールドテスト(災害時同行避難・畜産現場・動物病院)の実施から、地域産業界や地方自治体との連携を強化できるであろう。