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    (2026年度 折田 )

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2026年度 折田 )

SDGs: 難分解性素材のリサイクルおよび代替化への挑戦

 研究代表者

 工学部 応用化学科 教授 折田 明浩

 研究メンバー

 理学部 基礎理学科 教授 東村 秀之

 研究概要 

 現在、循環型社会の実現が求められる中、本提案は現代社会で広く利用される難分解性素材に焦点を当て、そのリサイクル技術および代替素材開発に挑戦する。シリコーン素材は天然資源が豊富で化学的に安定なため、生活・医療・電子用途に幅広く利用されるが、再利用が困難で廃棄負荷の増大が課題となる。また、AIサーバーや6G通信に向けた高周波基板用途はテフロンに依存してきたが、生体蓄積性・難分解性に起因して国際的なPFAS規制対象となり、早急な材料転換が求められている。これらの課題に対応すべく、本研究では(A) シリコーンに官能基を導入する化学的手法を確立し、選択的切断および再重合を可能とすることで「シリコーンサイクル」確立の基盤技術を構築し、資源循環を拡張する。さらに(B) 低誘電特性と熱安定・難燃性を両立させた非フッ素系材料を設計し、安全・安心な次世代デバイス材料を開発する。これにより、SDGs12・13に資する環境調和型材料科学と、SDGs9・3に貢献する産業基盤構築を同時に実現し、社会的要請の高い課題解決を目指す。

 研究目的 

①本研究の背景と着想に至った経緯
 (A) 近年、循環型社会への転換が国際的に求められているが、資源循環の議論は依然として炭素資源に偏重しており、地殻中に豊富なケイ素素材に関する循環基盤は未整備のままである。シリコーンは強固なSi–O骨格に起因して安全性・耐熱性・電気絶縁性に優れ、医療・電子・日用品・工業用途に不可欠な素材となっている。しかし、この高い安定性こそが分解・再重合・再成形を阻み、廃棄物としての処理量増大、リサイクル不能、製造時の高エネルギー消費を招いている。ケイ砂から原料シロキサンを得る工程は高温還元や塩素化操作を要し、温室効果ガス排出も避けられず、SDGs13「気候変動対策」を鑑みても改善が必要である。にもかかわらず、シリコーンの化学的リサイクルに踏み込んだ研究例は少なく、技術的な「空白領域」が残されている。
 (B) 一方、6G通信に加えてAIサーバーの急進展により、2035年に高周波基板用材料の世界市場は1,670億円になると予測されている。該材料としては、伝送遅延や消費電力を最小化する超低誘電特性だけでなく、高熱安定・難燃性も兼ね備えた素材が求められ、これまでテフロンの独壇場となっていた。しかし、テフロンもPFAS規制対象となり、産業界では「脱テフロン」が喫緊の課題となっている。テフロン代替材料として主に脂肪鎖系ポリマーが開発されているが、低誘電特性と高熱安定・難燃性のトレードオフを打破できる材料は未だに無い。
 これら二つの課題は、従来の材料評価やプロセス改善のみでは解決できず、分子設計・化学変換反応そのものに踏み込む基礎研究が不可欠であるとの認識に至り、本研究の着想に結びついた。

②本研究の目的と研究期間内の目標
 本研究は、(A) シリコーンの化学的リサイクル基盤を構築し、ケイ素循環(シリコーンサイクル)を実現すること、(B) AIサーバーや6G通信用の高周波基板材料に要求される超低誘電特性と高熱安定・難燃性を兼ね備えた非フッ素系材料を開発することを目的とする。これにより、資源循環と先端情報技術という一見異なる二つの領域を、材料化学の観点から統合的に捉える。
研究期間中の具体目標は以下の二点である。
 (A) 強固なSi–O結合を選択的に切断し、ヒドロキシ化(–OH官能基化)することで反応点を導入する。これにより共有結合を再構築可能とし、縮合・グラフト化・重合反応へ展開する足場を形成する。実験的には、モデル低分子から実用シリコーンゴムまで段階的に対象を広げ、分解効率、再重合後の物性保持率を指標として評価する。最終的には、再成形可能なケイ素材料を提示し、廃棄依存型のサイクル構造からの脱却を目指す。
 (B) 高周波基板用途には、誘電率ε<2.5、誘電正接tanδ<0.0015、熱安定性400℃以上、難燃性V0
(全芳香族型)が求められており、これらを満足する非フッ素系材料を開発することが期間内の目標である。また共同研究先の三光において、材料合成のスケールアップ検討も並行して進めており、サンプル試作とユーザー評価を進め、実用性を実証して社会実装することが最終目標である。特にAI関連は国の重点施策となっており、AIハードの差別化技術となることが期待される。
 以上により、SDGs12・13に資する循環型材料科学と、SDGs9・3に資する安全・高信頼電子材料の橋渡しを行う。

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