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    (2026年度 岩永 )

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2026年度 岩永 )

“分子のかたち”で電気を運ぶ〜低コスト有機正孔輸送材料の創製と太陽電池応用を目指して〜

 研究代表者

 理学部 化学科 教授 岩永 哲夫

 研究メンバー

 理学部 化学科 教授 山本 薫
 理学部 化学科 教授 酒井 誠
 京都大学 化学研究所

 研究概要 

 本プロジェクトでは、「分子のかたち」に着目した新しい有機半導体設計指針を確立し、低コストかつ高性能な正孔輸送材料を創製することで、次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト型太陽電池の高効率化と実用化促進を目指す。現在広く用いられている正孔輸送材料は合成コストが高く、材料供給や長期安定性の面で課題を抱えている。本研究では、含窒素パイ共役系ユニットを集積した独自の分子構造により、分子全体の平面性と分子間相互作用を高め、電荷(正孔)を効率的に輸送できる有機材料の開発に取り組む。安価な市販原料から短工程で合成可能な分子設計とし、材料コストの低減と安定供給を実現する点も大きな特徴である。さらに、有機合成、分光計測、固体物性評価、デバイス作製を専門とする学内外研究者が連携し、「分子構造―電子状態―太陽電池性能」の相関を多角的に解明する。分子設計からデバイス評価までを一体的に進めることで、汎用性の高い正孔輸送材料設計指針を提示し、持続可能なエネルギー材料研究の基盤構築に貢献する。

 研究目的 

①本研究の背景と着想に至った経緯
 地球温暖化やエネルギー資源の枯渇といった地球規模の課題を背景に、再生可能エネルギーの高効率利用は21世紀における最重要課題の一つとなっている。中でも太陽光発電は、クリーンかつ無尽蔵なエネルギー源として大きな期待が寄せられており、近年では従来型シリコン太陽電池に代わる次世代太陽電池の研究開発が世界的に加速している。その代表例がペロブスカイト型太陽電池であり、高い光吸収係数、長いキャリア拡散長、低温・溶液プロセスによる製膜が可能である点から、低コストかつ高効率な太陽電池として注目を集めている。ペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率は、近年飛躍的に向上し、実験室レベルでは25%に迫る値が報告されている。しかしながら、その性能向上の多くは光吸収層であるハライド系ペロブスカイト材料の組成最適化や結晶成長制御によって達成されてきた。一方で、デバイスの長期安定性やコスト、量産適性に直結する正孔輸送層については、未だ十分な解決策が提示されているとは言い難い。
 現在広く用いられている正孔輸送材料である球状構造を有するSpiro-OMeTADは、優れた正孔輸送能を示すものの、多段階合成を必要とする高コスト材料であること(1g/ 67,800円)、さらに、金属ドーパント添加を前提とするため化学的・熱的安定性に課題を抱えている。このような背景から、分子構造設計に基づいて電子状態や輸送特性を精密に制御でき、かつ低コスト・高安定な新規正孔輸送材料の開発が強く求められている。
 本グループではこれまで、含窒素パイ共役系分子の合成および様々な有機化合物の電子状態制御、分光学的手法に基づく電子状態の解明に関する研究を継続的に行ってきた。特に、カルバゾールなどの電子供与性ユニットを基盤としたパイ共役系分子において、窒素原子の導入やユニット集積化がHOMO準位や酸化安定性に大きな影響を及ぼすことを明らかにしてきた。これらの研究を通じて、複数のパイ共役ユニットを平面上に集積化することで、分子全体の平面性や分子間相互作用を高め、正孔輸送に有利な電子構造と分子配列を創出できるのではないかとの着想に至った。加えて、本研究では、「分子のかたち」に着目し、分子構造の対称性(点群)に基づく電子遷移の制御と集積構造による輸送効率の最適化といった付加価値を与えたい。

②本研究の目的と研究期間内の目標
 本研究の目的は、含窒素パイ共役系ユニットを集積化した分子を新たな正孔輸送材料として創製し、「分子のかたち」に起因する電子状態、酸化還元特性、固体・薄膜中での分子配列およびペロブスカイト型太陽電池への適応性を総合的に解明することである。特に、分子構造と正孔輸送能との関係を明確化し、低コストかつ高性能な有機正孔輸送材料の分子設計指針を確立することを目指す。研究期間内においては、以下の4つの目標を段階的に達成する。
(1) 含窒素パイ共役系ユニットを基盤とした大環状分子やパイ拡張分子を分子設計し、比較的安価な市販原料から短工程で合成可能な合成手法を確立する。(岩永,山本)
(2) 固体および薄膜状態における分子配列や分子間相互作用を解析し、正孔輸送特性との相関を明らかにする。(山本,若宮)
(3) 合成した分子について、レーザーを利用した時間分解吸収・蛍光分光、電気化学測定および理論計算を組み合わせ、電子状態や酸化還元特性を詳細に評価する。(酒井,岩永)
(4) ペロブスカイト型太陽電池の正孔輸送層として実装し、既存材料との比較を通じて本材料群の有効性を実証する。(若宮,岩永)
 最終的には、「分子構造―電子状態―デバイス性能」の関係を体系的に整理し、次世代ペロブスカイト型太陽電池に資する汎用的な正孔輸送材料設計指針を提示することを、本研究期間内の到達目標とする。

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