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    (2021年度 伊豆)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2021年度 伊豆)

臓器ネットワーク制御による筋脆弱症発症メカニズムの解明

 研究代表者

 獣医学部 獣医学科 実験動物学講座 准教授 伊豆 弥生

 研究メンバー

 フロンティア理工学研究所 講師 岩井 良輔

   獣医学部 獣医学科 毒性学講座 准教授 齋藤 文代 

 研究目的 

①本研究の背景
 筋肉量や筋力の低下(筋脆弱症)は、我が国の高齢者の約20%が罹患する疾患であり、転倒リスクを増加させ、要介護の原因となることから、克服すべき喫緊の社会的医療課題である。しかしながら、「体を動かす」という古典的対処法以外に有効な治療法は確立されていない。

 筋肉は腱を介して骨と連動し、1つの運動器ユニットとして体の動きを制御しており、筋障害では、腱や骨など他臓器も障害されることから、運動器間のネットワーク制御が重要であると考えられる。他方、筋肉は、肝臓や脂肪などと連携してエネルギー代謝を制御しており、肥満や糖尿病などの代謝異常では筋肉障害を併発することが知られている。すなわち、筋肉は運動およびエネルギー代謝に関わる複数の臓器間連携により制御されている。

 これまでの研究では、マイオスチンなど筋肉に局在する分子による局所制御メカニズムが解明されてきた。近年、筋肉から分泌される生理活性因子が、肝臓、脂肪、骨など様々な臓器に作用する(Severinsen and Pedersen endocr Rev. 2020)など、臓器間の相互作用に関する知見が集積され、臓器ネットワーク制御という概念が確立された。しかし、他の臓器から産生される生理活性因子が筋肉を制御するという知見はほとんどなく、臓器ネットワークによる筋制御メカニズムの全容解明には至っていない。

②本研究の着想に至った経緯
 筋脆弱症は生活習慣病や免疫障害など様々な要因で発症する複雑な病態を示すことから、適切な動物モデルが開発されておらず、超高血圧モデルや慢性炎症モデル動物などヒト病態の一部を模倣する動物モデルが代用されてきた。申請者らのこれまでの研究から、12型コラーゲンの全身性欠損マウスでは、運動器制御とエネルギー代謝機構の両方が障害され、筋脆弱症を呈することが明らかになり(未発表データ)、ヒト筋脆弱症の病態を反映する新規モデル動物として活用できると考えられた。12型コラーゲンは骨、腱、脂肪など複数組織に発現することから、12型コラーゲン発現を組織ごとにスイッチオン/オフすることで筋脆弱症に関連する臓器を特定し、筋肉以外の臓器から産生される生理活性分子による新たな筋制御メカニズムを解明できると考えた。

③本研究の目的と研究期間内の目標
 本研究では、筋脆弱症の新規治療法の確立を目指し、臓器ネットワークによる筋肉の新規制御メカニズムを解明することを目的とする。脂肪組織特異的12型コラーゲン欠損マウス及びin vitroで再構築した3D骨-腱-筋肉複合体(in vitro 3D運動器モデル)を新たに作出し、1)筋脆弱症を引き起こす臓器を同定する。次に、筋脆弱症を引き起こす組織特異的12型コラーゲン欠損マウスの分泌分子の網羅的解析を行い、筋細胞株の2D培養による分化誘導スクリーニングにより、2)筋制御分子を選出する。さらに、選出された分子を12型コラーゲン欠損筋脆弱症モデルに導入し、病態改善を検証することで、3)筋脆弱症発症メカニズムを解明する(図2)。本研究により、筋制御の新たなターゲット分子群による新規治療法の確立が期待され、これにより、超高齢社会における健康寿命の延長に貢献できる。

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