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    (2021年度 汾陽)

岡山理科大学プロジェクト研究推進事業
(2021年度 汾陽)

細胞間コミュニケーション機序としての細胞外小胞研究の展開

 研究代表者

 獣医学部 獣医学科 教授 汾陽 光盛

 研究メンバー

 獣医生理学講座 准教授 村田 拓也
 獣医生理学講座 助教 千葉 秀一
 獣医生化学講座 助教 田中 良法
 獣医免疫学講座 助教 村上 康平
 獣医寄生虫学講座 助教 林 慶

 研究目的 

①本研究の背景
 細胞外小胞(EV)は、ほとんどの細胞が産生する膜小胞である。特に微小なものをエクソソーム、比較的大きなものをマイクロベジクルと呼ぶ。エクソソームはエンドソーム由来多胞体(multi vesicular body)の放出する微小胞で直径は約30–150 nm、マイクロベジクルは細胞膜の発芽によって産生される直径50–1,000 nmの小胞である(図1)。以前は、細胞から生じるゴミ(wastes)の類いと考えられてきたが、近年EVがペプチドやタンパク質に加えてRNAを含むこと、がん細胞の放出するEVが浸潤や転移において重要な役割を持つことが示され、細胞間コミュニケーションを担う機序としてにわかに注目されている。多細胞動物による細胞間の情報交換は、これまで専ら細胞の産生する化学物質(ホルモンや神経伝達物質)の分泌と標的細胞の受容体タンパク質の相互作用によるものと理解されてきた。EVによる情報伝達は、その範疇に入らない細胞間コミュニケーションのプロトタイプと考えられる。しかし、EVの大きさはウイルス程度で、最近までそのような微小胞の機能を研究することは難しかった。近年、技術的に解析可能となり改めて注目され始めたものである。調べられた範囲で、ほぼ全ての細胞がEVを産生すること、周辺細胞の機能に影響する物質を含んでいることから、EVが重要な細胞間コミュニケーション手段として注目され始めた。EV研究は世界的にも新しい研究分野であり、様々な研究者がEV研究に参入している。国際細胞外小胞学会(ISEV)は、2012年に創設されたばかりであり、日本細胞外小胞学会も2014年に設立された若い学会である。学際的な学問分野として発展しており、医学、薬学、理学、畜産学、獣医学その他様々な分野に研究者がいる。今まさに広がりつつある研究分野である。


②本研究の着想に至った経緯
 研究代表者がEV研究を開始したのは、視床下部ホルモンであるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が、下垂体で特異的にアネキシンA5(ANXA5)の発現を促進すること、ANXA5がゴナドトロピン分泌を促進することを発見したことに端を発し、GnRHがゴナドトロピン産生細胞の株化細胞であるLβT2で、ANXA5を含むEVの産生を促進することを発見したことによる(図2)。即ち、GnRHはANXA5を含むEVを放出させ、それによってゴナドトロピン分泌を促進することが示唆された。現在の所、EV生成の調節機序については、どの細胞でも全く知られておらず、その分子機序の解明とEVの生理機能が、研究代表者の当面の研究課題である。このような背景の下で岡山理科大学内を眺めると、EVについての重要性を認識して自分の研究に取り入れようとしている人、既に部分的に始めている人のいることに気がついた。これら複数の研究者が協同して研究を進めることで、まだ未発展のEVについて、多角的に知見を集積出来る可能性のあることが分かった。そこで、EV研究を格段に進め、岡山理科大をEV研究のプラットフォームとすることを目的に本研究プロジェクトを構想した。


③本研究の目的と研究期間内の目標
 EVが異なる物質を含む機序、EV放出機序、放出量の調節機序、EVの生理作用など、情報伝達機構としてのEVの理解や応用のために、まず獣医学部内からプロジェクト参加研究者を選抜した。本プロジェクトの個別研究テーマと達成目標は次の6つである。

これらEVを共通する研究課題によって多角的に研究を進めることで、情報交換と共に総合的なEV研究としての成果を目指す。日常的にEV研究に関する情報交換、共同研究を進めると共に情報発信についても協同して行い、岡山理科大学を新しいEV研究拠点(OUS-EV)とすることを目指す。

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