工学部 バイオ応用化学科 教授 折田 明浩
フロンティア理工学研究所 教授 赤司 治夫
理学部 准教授 岩永 哲夫
理学部 教授 林 謙一郎
理学部 教授 東村 秀之
理学部 教授 満身 稔
岡山大学大学院 環境生命科学研究科 研究教授 高口 豊
①本研究の背景
化石燃料に代わる環境調和型エネルギーとして,太陽光が注目されている。太陽光は,クリーンかつ安価なうえ,無尽蔵に利用できる天然資源である.天然資源に乏しい我が国では,現在,産学官が様々なアプローチを通じて太陽光の有効活用に取り組んでいる。
②本研究の着想に至った経緯
本研究プロジェクトでは,化学的なアプローチから太陽光の有効活用に取り組む。具体的には,光エネルギーによって駆動される化学反応を通じて有用化合物を合成したり,太陽光を用いた光電変換から水素を製造する方法論の確立に取り組む。本研究では,植物の光合成に見られるような高効率なエネルギー変換や分子変換技術を獲得するために,酵素や葉緑素など天然に存在する化学反応器官や物質を範とする研究も同時に並行して展開する.なお,本申請グループメンバーの多くは,これまでに光化学活用に向けた分子設計・合成・デバイス作成・機能測定・メカニズム解析など膨大な知見を蓄積しているが,これらのノウハウを集約することで,光化学・光電変換に関わる化学領域の新展開を目指す。
③本研究の目的と研究期間内の目標
本研究は光利用というキーワードの下,「ものづくりの化学」を中心に展開する。各メンバーには多分野に渡る研究内容や研究スキルが求められるが,それぞれ個別の研究を推進するなかで,プロジェクト研究のレベルアップ・新展開を目指す.同様に,メンバー間の協働を通じてこれまで予想しなかった新発見・新現象・新展開への端緒を掴みたい。初年度は研究に必要な色素や触媒化合物の設計および合成法を確立するとともに,これらを用いた包接複合体や自己集積体の構築法を試みる。この際,簡便かつ実用的な合成法に仕上げ,研究展開の迅速化に努める.2年目は,初年度に調製した包接複合体や自己集積体を用いて光駆動反応や光電変換について評価および改良を試みる。特に,本プロジェクトで連携する岡山大学大学院 高口 豊研究教授には,光電変換素子の作成・評価などより実践的な観点からの評価いただき,その結果を速やかに,続く分子設計・合成へ反映する.初年度に色素,合成法を確立していることから,誘導体など機能向上に必要な化合物の合成は迅速に行うことができる。必要化合物の合成法をさらに展開・拡大したり,他の合成戦略からの調製を試みるなど,研究の新たな展開を目指す。こうした,合成-評価のサイクルと並行して,光駆動反応や光電変換のダイナミクス解析を通して,メカニズムを探る.これら一連の研究展開から,本プロジェクトの課題として取り上げた,「有機色素駆動型光電変換を志向した分子設計化学」の有用性・実用性を評価する。