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岡山理科大学プロジェクト研究推進事業(平成28年度 亀崎)

瀬戸内海に生息する世界最小のクジラ、スナメリの行動研究とモニタリング
手法の開発

 研究代表者

 生物地球学部・生物地球学科 教授 亀崎 直樹

 研究メンバー

 生物地球学部・生物地球学科 准教授 武山 智博
 生物地球学部・生物地球学科 准教授 大橋 唯太
 工学部・情報工学科     助教  クラ エリス

 研究目的 

 ①背景と経緯
  スナメリNeophocaena phocaenoidesは日本からインドにかけて分布する小型のクジラ類である。日本では関
 東地方から九州地方の内海の沿岸域に生息し、瀬戸内海はその主要な生息地である。近年、本種の個体群サイズ
 の縮小が危惧されており、国際自然保護連合(IUCN,2009)のレッドデータブックでは VU(絶滅危惧Ⅱ類)、
 岡山県のレッドデータでも絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。ただし、瀬戸内海での分布や生態については、
 Kasuya et al.(2002)などによって、分布域に関する報告例がわずかにあるに過ぎず、比較的人間生活に近いとこ
 ろに生息する野生動物にも関わらず、その実態は明らかにされていない。このように本種の生態に関する研究が
 遅れる理由としては、本種の個体には背鰭がなく、海面からその個体の認識が行えず、さらには個体識別も不可
 能であることが挙げられる。そこで、本研究では最近急速に技術が進歩した音響記録装置を利用し、本種の移動
 パターン、個体数、行動について、岡山県前島周辺の海域で実施する予定でいる。この技術が確立されれば、瀬
 戸内海全域に調査ポイントを設置し、瀬戸内全体を網羅した本種の研究体制を構築したいと考えている。また、
 本種は瀬戸内海の生物生産量や健全度の指標としても使える可能性がある。将来、瀬戸内海沿岸に生活する住民
 が、この海洋性の哺乳類に興味をもつことで、身近な海の保全と利用について考え続けるきっかけを作りたい。

 

 ②研究期間内の目標
  本研究を実施する2年間で、瀬戸内市前島およびその周辺に音響ロガーを5器設置する。設置個所は桟橋の橋
 脚などを予定している。音響記録装置の録音時間は約1か月なので、その間隔で装置を回収し、音声の解析を行
 う。収集された音声とドローンにより得た動画の分析を行い、移動、個体数、行動などを推定する技術を開発す
 る。また、気象、海象との関係も考察を実施する。さらに、将来的には収集した音声をリアルタイムでインター
 ネットを介して岡山理大に転送する技術に関して成果をあげる予定である。

 ③特色および独創性
  前述したように、スナメリの研究が他の鯨類に比較して遅れている最大の理由は、目視調査が行いにくいこと
 にある。本研究は、目視調査は補完的におこなうに留め、主な取得データはスナメリの発する音声であることに
 特色がある。このような音声を用いた鯨類の研究は、シャチやジュゴンなどで一部行われているが、スナメリに
 おいてはまだ実施されたことはない。また、瀬戸内海のような内海は、この手法を用いた研究場所としては、適
 地であり、ある程度顕著な成果を出しやすい海域だといえる。   さらに通常の動物の研究より、瀬戸内海に唯一生息する鯨類ということで、一般の注目を浴びやすく、将来的
 には市民も参加するプロジェクトに発展させることが出来る。

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