工学部・バイオ・応用化学科 教授 折田 明浩
理学部・化学科 講師 岩永 哲夫
理学部・化学科 准教授 佐藤 泰史
理学部・化学科 教授 酒井 誠
理学部・化学科 講師 大坂 昇
理学部・臨床生命科学科 教授 松浦 信康
自然科学研究所 教授 赤司 治夫
理学部・生物化学科 教授 林 謙一郎
①背景と経緯
化学系教員を中心とする本グループは,私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の助成を受け,「ハイテクリサ
ーチセンター」および「グリーン元素科学」では,新物質の創製と新機能の発現を探索してきた.これまでに蛍
光発光色素,抗腫瘍活性分子や植物成長ホルモン分子の自在合成に成功しただけでなく,それら新化合物の有用
性・実用性および生体内での機能や生理活性を明らかにしてきた.本プロジェクトでは,従来のプロジェクトで
特に目覚ましい業績を上げた「色素材料開発」と「医療・生体関連分野」に特化し,これら2つの分野を融合す
ることで「色素材料」および「医療・生体」の境界領域における新たな機能分子創製技術の新展開を図りたい。
②研究期間内の目標
本プロジェクトは,センシング機能を有する生理活性小分子の実用的合成法を提供することで,迅速レセプ
ター探索や分子標的治療など医療・生体関連分野でのより高度な応用展開を目指す.具体的には,「1.セン
シング分子の創製」-「2.機能性分子へのセンシング機能導入」-「3.センシング機能の有効性および実
用性の評価」という一連のテーマに沿ったメンバーでチームを構成し,各メンバーが個々の専門分野で新材料
の創製や新評価法の開拓を編み出すとともに,グループ内で積極的に情報交換や共同研究を通じて,in vitro
での生理活性評価に充分耐えうる「センシング分子創製法」や「迅速評価法」を確立する.
本プロジェクトは「生理活性センシング小分子の創製」を研究基盤に据えて「医療・生体関連分野」での新
展開・新領域の開拓を目指すが,最終的には,本プロジェクトから得られた知見や新発見をシーズとして統合
的な展開を試みる.具体的には,本プロジェクトメンバーを核にブランディング事業へ申請したり,何名かの
メンバーがチームを組むことで,科学研究費助成事業 基盤研究Bへの申請を行うなど,大型プロジェクトへ
の継続申請を通じて更なる研究の発展・展開を狙う.
③特色および独創性
近年,分析技術や測定装置の進歩に伴い,医療や材料の研究開発分野では生体組織や分子の可視化技術が目
覚ましい発展を遂げつつある.例えば,3Dプリンターによる手術患部のモデリング化や超分解能蛍光顕微鏡
によるリアルタイムでの1分子観察など,一昔前には想像もつかなかった可視化技術が確立されつつある.本
プロジェクトメンバーもこうした可視化技術に着目し,学外の専門家との共同研究により,生理活性化合物の
受容体や分子内の1つの化学結合を「目で見る」ことに取り組み,そのいくつかは可視化に成功している.
こうした学外の専門家との共同研究を展開する中で,「分子や生理活性中心を可視化する技術・目で見る技術」
の有用性や潜在能力を実感すると同時に,「分子を見る技術」は未だ不充分で,実用的な利用レベルに達する
にはいくつかの技術革新が必要との考えに至った.そこで,本プロジェクトでは「合成」,「バイオアッセイ」
および「その場観察」の専門家からなる研究チームを組織し,「分子を見る技術の革新」に挑む。なお,本プ
ロジェクトメンバーはいずれも「分子を見る」専門家ではない.「望む分子を作る」,「高効率で生理活性を
評価する」および「極限環境下での物質変化を見る」ことに長けたスペシャリストであり,これまでにも優れ
た独創的な研究成果を挙げるとともに,科研費や助成金等の競争的外部資金を獲得してきた研究者で構成され
たスペシャルチームである.本プロジェクトでは研究背景や得意分野は異なるものの,個々が高い研究能力を
有するメンバーがタッグを組み,斬新なアイデア,オリジナリティーに富む物質創製,センシング評価,解析
アプローチを結集し,これらを融合することで,医療・生体関連分野の「見る技術」に新領域を切り拓く.